鬼部長の優しい手




…なんか、むかつく。




ちらりと盗み見た部長の表情は
まっすぐ前を向いて、いつも通りの
仏頂面







…私だけこんなに、あれこれ考えて
バカみたいじゃない…



いや、でも翌々考えたら、
部長は“私だから”じゃなくて、
“夜道で女一人は危ないから”って事で
深い意味なんて、無かった…?









絶対そうだ!

…っうわー。
だとしたら、私めちゃくちゃ恥ずかしい
一人で浮かれて先走って







ここ数年で一番、恥ずかしい…

本当に穴があったら入りたい…











「七瀬?ずっとうつむいているが…



どこか具合でも悪いのか?」




「え…、いや…っ!
大丈夫です、大丈夫…ですから!」









ずっとうつむいた私の様子を心配してか
部長はそうやって私の顔をのぞきこんできた。








…部長は優しいから、
そうやって心配してくれたり、
わざわざ送ってくれたり、





それは私に、特別な感情をもっているんじゃなくて、





部長は優しいから。












…なんか、一人で気づいて悲しくなってきた。


気づいたときには、
目頭は熱くなり、視界はぼやけていって
鼻の奥にじんっとする違和感。



本当、バカだ私

一人で勝手に浮かれて舞い上がって
気づいて傷ついて…





挙げ句、部長に心配までさせて…

これ以上もう、塚本部長に迷惑は
かけられない。





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