鬼部長の優しい手
「俺流、緊張のほぐしかた!」
「緊張の…ほぐしかた?」
そっか、山本くんは
もう三組のカップルの式を成功
させてるんだっけ…
やっぱり、緊張の取り方とかも
知ってるんだ…すごいなぁ…
同い年なのに。
少し関心しながらも、
山本くんの次の言葉を待つ私。
「…自分がね結婚したときのことを
考えるんだ」
自分が結婚したときのこと…?
山本くんの言葉を理解できなかった私は
少し右に首を傾ける。
「結婚して幸せそうにしてるお客様を
見ながら、
“自分が式を挙げるときは、
こんなドレス着たいなー”とか、
“参列者に出す料理は
こんなのにしよう“とか、
まぁ、自分と花嫁を重ねて見るとかね」
重ねて見る…
そんなことで本当に、緊張が
ほぐれるのかな?
「不思議とね、ちょっと心が落ち着くんだ。
まぁ、個人差はあると思うけど
俺は式のとき、だいたいそうやって
緊張をほぐしてる」