鬼部長の優しい手
「…ここからは、
図々しい先輩の、ただの独り言。
いい?」
「あ、はい。
私、なにも聞いてませんよ?」
戸惑いながらも、
そう言った私に先輩は、ふふっと笑い
“ありがとう”と言ってきた。
そして、ふぅと息をついたかと思うと
再び真剣な顔で私を真っ直ぐ見つめながら、こう言った。
「塚本もね、
もう32なのよ。
いつまでも、このままってわけには
いかない。
これからいくら月日が経っても、
いつかは立ち直らなきゃいけないと思うの
紗耶香の親友として、
そしてなにより、塚本の親友として
塚本には、そろそろ幸せになってもらいたいの」
「そして、それが出来るのは、
七瀬、アンタだけだと思う」
「私…?」
香澄先輩のその言葉の意図がわからなかった私は、不安に思いながらも
香澄先輩にそう聞いた。
すると、香澄先輩は
にっこりと笑って、
「…塚本を幸せにできるのは、
きっともう
七瀬だけだと思うから。」