aqua regia

一年生と話しているところを見ると、やはり普通。この前は怒っていたからあんな感じだったのか。

「すいません、来て頂いたのに。でも先輩、美声なので放送部向いてると思いますよ」

「本当? お世辞ありがとう」

「お世辞じゃないですよ。だって、部長と口きけるくらいだもの」

その言葉にも引っ掛かる。思えば、彼女と口をきいていた一年生も綺麗な声をしている。

「そいつだよ、あたしの愛読書に水ぶっかけたの」

「ああ、あの顔面レシーブの」

「え、何で顔面レシーブのこと知ってんの?」

「同じ学年の放送部の子が教えてくれました。先輩、結構有名みたいですね」

それは顔面レシーブで有名になってるんじゃないよな…?

クスクスと笑う一年生に問いたかったけれど、怖いから辞めといた。
彼女は伸びをして時計を見た。

もうすぐ始業時間だ。



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