G.H.Emperor

初めて遺体が発見されたのは、今から丁度一ヶ月前。


桟橋の下で男性と女性の惨殺死体が発見されたのを皮切りに、一週間毎に事件は起こった。
現在で既に四回。
被害者は若い男女計十一人。

一人が襲われた時もあれば数人が一度に殺された場合もある為、状況上犯人は複数いるのではと考えられている。

その遺体のどれもが咽せ返る様な肉片に成り果てており、散切られた四肢は自ら飛び散るかの如く拡散され、えぐられた臓腑は華の様に。地に染み込んだ血液は草木を育てる様に。


これらの被害、目を背けたくなる奇怪な点は他にもある。

まず被害者の身体の大部分が無くなっている事。
これはどの死体もそうであり、破損部分はまるで食い荒らされた様に隠滅していた。

無くなったからにはつまり、犯人達が持ち去ったのか。
では何の為に。


次に、被害の一組目、二組目は全身に渡って酷く血濡れになっているのに対し、三組目と四組目は顔だけが、綺麗に残されていた事……

そして顔の残った彼らは皆、快楽を味わったかの如く優越な表情を浮かべていた。


被害者十一人に全て適合する共通点は皆無。

残酷な犯行、遺体の大破損、残された顔。

犯行を楽しんでいる様に、謎だけを置き去りに。


有無を言わせぬ壮絶な惨劇の現場に、訪れた捜査班は皆口を揃えてこう言った。


『人の仕業に思えない』、と。





< 2 / 27 >

この作品をシェア

pagetop