恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜




「くれぐれも。現場で、……その、イチャついたりしないで下さいよ!」


 職員室を監督する立場の教頭は、しかめた表情を見せた。
 すると、古庄が応えるよりも早く、それまで黙り込んでいた真琴が、勢いよく立ち上がった。


「ご心配なく!そんなこと絶対にしません!!」


 その迫力に押され、管理職一同も古庄も、ただ真琴の顔を呆気に取られて見上げるばかりで、次の言葉が出て来なかった。




 職員室へ戻る階段を上がりながら、前を行く真琴の手を、古庄が捕まえた。


「……怒ってるのか……?」


「なんで怒るんですか?」


 真琴はぶっきらぼうに、問いに対して問いで答えた。笑顔でも作りたいところだったけれど、とてもそんな気持ちの余裕はなかった。


「じゃ、嫌だったのか…?」


「何が嫌なんですか?」


「俺と……結婚したことだ……!」


 古庄はそう言ってみて、改めて結婚してしまった事実を噛みしめた。思わず顔が赤らんでくる。


「……嫌だったら、初めからあの届けに名前を書いたりしません」


 階段の途中で、真琴は古庄に手を捕られたまま、古庄の方へと向き直った。
 その時、咳払いの声が響いて、二人がそちらに目をやると、遅れて職員室へ戻ろうとした教頭が立っていた。



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