恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



「古庄先生!見ちゃダメです!!……早く、前閉めて!!」


 真琴は腕に力を込めて、古庄を翻させた。しかし、古庄はチラリとそれを見てしまったらしい。後ろを向きながら、きまり悪そうに顔を赤らめさせた。


「……と、とにかく、7時には下校するように言われてるだろう?それも守らない上に、こんなところで何をやってるんだ。学校はそんなことをするのにふさわしい場所じゃないことくらい、分かっているだろう?」


 古庄は、自分が今まさに〝そんなこと〟をしようとしていたことを、完璧に棚に上げている。火野とその彼女へのお説教を聞きながら、真琴は心の中で苦笑いをした。


「俺と賀川先生が見てしまったことを見過ごすわけにいかないから、これから生活指導の先生に言わなきゃいけない。いろいろ訊かれて処分されるかもしれないけど、自分たちがやってしまったことだから、きちんと考えて受け入れるように」


 と言ったところで、古庄は自分の腕時計に目を落とす。
 そういう何気ない仕草もとても絵になる古庄に、真琴は状況も忘れて見入ってしまった。


「もうすぐ7時半になって、管理棟が閉まってしまうから、とりあえず出よう。指導主任には、それから連絡だ」


 それが自分に言われていることと分かるのに、真琴は一瞬を要したが、冷静に頷く。


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