恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



「……ちょっと、そこで待ってろよ。逃げても同じことだからな」


 生徒たちにそう言った後、古庄は真琴に目配せして歩き出した。真琴は職員室へ戻りながら、携行していたスマホで指導主任へと連絡を取った。


 手早く荷物をまとめて管理棟から出ると、二人の生徒は言われた通り、さっきの窓辺でしょんぼりと並んで立っていた。指導主任がここへ到着するには、もうしばらくかかるはずだ。


「指導主任には俺が説明するから、賀川先生は今日は帰っていいよ」


 と、古庄から心残りな視線を向けられて、真琴も少し寂しそうに視線を返す。

 これで、古庄が思い描いていた今夜の計画は、実行することなく崩れ去った。


――……くそぅ!お前らだけ、あんなチューをしやがって……!!俺なんか結婚してから、まだ初夜がないんだぞ!!


 今の古庄にとって、あのラブシーンはものすごく目の毒だった。この二人さえいなかったら、古庄はあのまま真琴に、キスくらいはできていたかもしれない。


 ずいぶん前に、真琴にキスをしたことを古庄は思い出した。
 しかし、初めて真琴に想いを告げたその時のことは、焦っていたのと興奮していたせいもあり、あまり思い出せない……。


 恨めしそうに二人の生徒を見据え、それから愛しい真琴へと目を移す。

 荷物を抱え歩いていく真琴が、校舎の陰に隠れるまで、古庄は切ない想いと共に見送った。





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