恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
有紀が感じているときめきと、真琴の感覚が同化する。始まったばかりの恋の光景を見て、真琴の胸はドキドキと大きな鼓動を打ち始めた。
真琴は、無性に古庄に会いたくなった。
この学校に着任した日、しだれ桜の下にたたずむ姿を見たときから、毎日会うたびに心にときめきをくれる、何よりも愛しく大事な人に――。
今、忙しく大変な思いをしている彼の傍に飛んで行って、その苦労を分かち合いたいと思った。何でもいいから、彼の役に立ちたいと思った。
真琴が、すぐにでも古庄を探しに行こうと思ったその矢先、それまで全く教室には姿を見せなかった古庄が、そこに現れた。
「賀川先生!大変なことになった!!助けてほしい!!」
古庄は血相を変えて、息を切らせている。尋常ではない様子に、真琴も今抱えていた感情の高まりを忘れて、非常時に対応する教師の顔になった。
だが、突然の古庄の登場に、古庄のクラスの生徒たちは沸いた。
「わっ!!古庄先生、見て!!私たちの力作!」
生徒たちは古庄の周りに群がり、自分たちの頑張りを誇らしげに語りかける。やはり、相変わらず女子生徒には絶大な人気があるようだ。