恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
 


 教室内は、緊張した熱気に包まれている。生徒たちも古庄も、破損した短冊を新たに作り直すために、一心不乱に色の塗り分けをしている。


「短冊、新しく刷ってきましたよ。800枚あれば足りる?」


「ありがとうございます!足りると思います」


 真琴が声をかけると、どこからともなく応えが返って来る。
 短冊をひとつかみし、4色の油性ペンを持って、真琴が机に着いた時、理子が他の教員たちと共に、その教室に現れた。
 特活の教員だけではなく、有志の教員たちが手伝いに来てくれている。その中には例の平沢もいた。


「賀川先生。何をすればいいですか?教えて下さい」


と、殊勝な面持ちで、理子が真琴の側に立った。真琴は微笑みを浮かべて、彼女を見上げた。


「それじゃ、教卓のところにこの短冊があって、あの生徒のところに番号の書いたまた別の小さい短冊があるから、その並んでる数字の通り、マス目を5色に塗り分けてくれる?0は白、1は黒、234はそれぞれ赤青黄に対応してるから。こんな感じで。それと、必ず短冊の通し番号を裏に書いてね」


 真琴は、塗り分け作業をしかかっている手元の短冊を、見せながら説明した。理子もうなずいて、早速作業に取りかかる。



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