年下オトコたちの誘惑【完】
「杏姫、起きましたか?」
「は、い…?」

目が合ったあと、ゆっくりとわたしから離れると、いつもと違う言葉が。

しかも『杏姫』って、なに⁉︎いつからわたし、姫になった⁉︎

「杏ちゃん、なかなか起きひんからぁ。王子様のキスで起こしたんや」

キラッキラの笑顔で、わたしを見つめる楓。

ホントなら、『なにしてんのよ‼︎』って怒るとこなのに、言えない自分がいて。

イヤじゃないわけじゃない。ただ、碧都のあの表情、あの言葉、あの声が忘れられなくて。

寝て忘れてしまいたかったのに、起きた今。

忘れられていなくて。だから、楓の行為はいけないことだけど、これで忘れられるなら、って思った。

「……でもダメだ」
「ん、悩み事?」
「うん、ちょっとだけ…」

楓って変だし、チャラいけど、何か頼れる気がして。

少しだけ弱みを見せちゃった、のかな。

「なんやなんや〜?って、だいたいの予想は付いてるんやけど」
「えぇっ⁉︎もう⁉︎」

わたしって、分かりやすいのかな…。顔に出てたかな…。

「あはは、分かったのは杏ちゃんやなくて、あーちゃんのほうや」
「あ、おと…?」
「せや」

碧都がどうしたんだろう。碧都も、何か分かりやすかったのかなぁ。
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