年下オトコたちの誘惑【完】
何度話そうとしても、碧都はわたしの話を避ける。

こんなの絶対おかしいって思うけど、時間がないのも事実で。

「それ早く言ってよ‼︎」
「グッスリ寝てる杏が悪いだろ」
「じゃぁ、起こしてくれたって良かったじゃない‼︎」
「……んな、可愛い寝顔してんのに起こせるかよ」
「なに?聞こえない‼︎」
「なんでもねぇつーの。早く着替えろ」

最後なんて言った?ボソボソなにかは言ってたけど、全然聞き取れず。

聞いたらキレる。これ一番イヤなパターンじゃない?

そして碧都はキレるだけキレたら、大股で部屋を出て行った。

「お待たせ」

あれからすぐに着替え、髪をおろし手ぐしで整えると碧都の元へと急いだ。

「行くぞ」
「うん」

今日は碧都と、この道を歩くんだ。楓とも歩いたのに、なんか全然違う。

楓の時は色々お話したけど、碧都との会話はゼロ。

ホントに碧都は、わたしを好きなんだろうか。不安になる。

「ねぇ、碧都」
「あ?」
「やっぱり、悠ちゃんからなにか聞いたでしょ」
「別になにも、」
「完璧に忘れられてないわたしを、気持ち悪いと思った?」
「は?どうしてそうなるんだよ」
「だって、母親と浮気っ……」

ダメだな、わたし。全然ダメ。口にするだけで、フラッシュバックする。

立ち止まって、頭を抱えるわたしを碧都は『もう、なにも言わなくていい』と、優しく抱きしめてくれた。

やっぱり悠ちゃん、あのこと碧都に話したんだね…。
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