年下オトコたちの誘惑【完】
頭を抱えて、ブツクサ言ってるわたしの肩に手が置かれた。

優しく『ポンポン』と二回。

「え?」

驚いて顔を上げると、さっきまでとは比べものにならないほどの笑顔で、ワンコロがわたしを見ていた。

「欲求不満は、あとでボクが解消してあげるから、とりあえず今は付いてきてくれるー?」
「なっ…‼︎」

『言葉にならない』とは、こういうことを言うのか…。

絶対に年下であろう男子に、こんなことを言われる日がくるなんて…。

情けないオンナだわ。

「ほらほら、早くぅ‼︎」
「ちょ、ちょっと⁉︎どこに行く気よ‼︎わたしまだあなたと行くなんて、一言も言ってないわよ⁉︎」

そんなわたしの叫びも虚しく、ワンコロに腕を掴まれ歩くこと15分。

そこは夏になると家族やカップル、仲間内などで賑わう海だった。

わたしの家からは海が近く、悩んだりした時には散歩がてら必ず来る海。

今日も散歩がてら海に行く途中だったんだけど…。

まさか、こんなことになるなんて思いもしなかった。

「こっちだよー!」

グイグイと引っ張るワンコロに、もうわたしは何も言わず付いて行った。

どうせ何を言ったって聞きゃーしないだろうし、このワンコロは。

だったら抵抗しないで、おとなしく付いていったほうがイイ。

今は昼間だし、別に危ないこともないだろう。

海が見えてから砂浜を歩いて、5分くらい経っただろうか。

一軒の小屋が見えてきた。

あれって、なんて言うんだっけ。海の家って言うんだっけ?

焼きそばとか、カキ氷とか色々食べたりできるんだよね。

昨年、真哉(しんや)とも来たっけー。

カキ氷食べて、お互いの舌見せ合って『ケタケタ』笑って。

あー、懐かしいや。

「連れてきたよー!」

突然聞こえたワンコロの声に、一瞬で現実に戻された。
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