彼氏人形(ホラー)
☆☆☆

家に着いたころには息があがり、額に汗が流れていた。


少しでも蒼太の機嫌が悪くならないようにと、足をゆるめることなく歩いて帰ったからだ。


あたしは玄関を開けて「ただいま」と、2階へ届くくらいの声で言う。


靴を乱暴に脱いでドタドタと足音を立てながら部屋に入ると、笑顔の蒼太がいた。


「陽子、お帰り」


「……ただいま」


蒼太の笑顔にホッとしてようやく肩の緊張がほぐれる。


口の中がカラカラで何か飲みたかったけれど、それよりも蒼太との会話を優先しなきゃいけない。


あたしは乾いた唇にリップクリームを塗るだけで我慢して、ベッドに座った。
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