彼氏人形(ホラー)
実紗のカバンと自分のお弁当を持って、保健室へ向かう。


「失礼します」


入学してからほとんど入ったことのない保健室に、少しだけドキドキする。


ドアを開けて入ると消毒席の匂いがツンッと鼻につき、先生の机には誰もいなかった。


「実紗、いる?」


「陽子?」


カーテンが引いてある奥側のベッドから、実紗の声が聞こえてきた。


カーテンを開けると、そこには目を細めてこちらを見る実紗の姿があった。


「ごめん、まだ寝てた?」


「うん。もうお昼なんだね」


実紗はそう言い、体を起こす。


「うん。お弁当カバンに入っているんでしょ? 持ってきた」


そう言って、実紗にカバンをさし出す。


「ありがとう。今日、ここで食べる?」


「そうしようと思って。今先生いないし、黙ってればバレないよ」


「そうだね」


そう言って、あたしたちは久しぶりに微笑み合ったのだった。
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