あの日あの時...あの場所で
「今日、ここに来て良かった。圭吾君には感謝しなきゃね?彼が段取りしてくれなければこんな機会無かったと思うの」
「ああ、だな。普段は煩せぇけど、たまには役に立つ」
微笑んだ瑠樹に微笑み返す。
瑠樹の事は言うように今回は圭吾のお節介に感謝だな。
「今度お礼しなきゃね。圭吾君はどんなもの好きだろ」
小首を傾げ考え込んだ瑠樹に、
「あんまりやると図に乗りすぎるから止めとけ」
と言っておく。
圭吾は良い奴だけど調子に乗るとうぜぇからな。
「えっ、そうなの?でもなぁ...」
驚いたように目を丸める瑠樹。
「瑠樹は余計な事考えなくて良い。俺の方で何かしておく」
礼ぐらいは言ってやっても良い。
「...ん、分かった」
聞き分けの良い瑠樹は可愛い。
昔みたいに戻れるかな?俺達。
一方的に手放しておいて虫の良い話だとわかってる。
だけど、出来ることなら戻りてぇ。
瑠樹の一番側に居る男は俺であって欲しいんだ。
南の狼王なんかじゃなくてよ。
瑠樹をこの手に取り戻してぇ。
俺は両手の平を見つめる。
この手は、瑠樹以外の女に触れてきた。
数えらんねぇ程に。
そして、喧嘩で明け暮れ何人もの血で染まってる。
こんな手で瑠樹を抱き締めてぇなんて欲深すぎるか。
だめだとわかってても、もう伸ばさずにはいらんねぇんだ。
瑠樹が欲しくて...欲しくて堪らねぇ。
狼王になんて易々と渡したくなんてねぇ。
バカな俺は、自己中心的な考えを貫くために必死に考える。
瑠樹を側に置くための秘策を....。
だって、瑠樹は俺にとって、何を捨て置いても欲しくて堪らねぇ存在なんだよ。
俺はゆるりと口角が上げた。
今は狼姫と呼ばれてても良い、最後に俺の手中に収まってくれんなら。
バカな事をして瑠樹を泣かせた俺だから、今度は俺が瑠樹を待つ。
そう決めたんだ。