あの日あの時...あの場所で










それから暫くして、眠った瑠樹ちゃんを大事そうにお姫様抱っこしたキングが溜まり場に姿を現した。


二人の姿が余りにも美しくて、俺を含めたメンバー全員が息を飲んだ。


あまりにもキングの表情が穏やかで。

瑠樹ちゃんを見下ろすその瞳が優しくて。


ああ...本当に彼女が大切で仕方ないんだな。

その場に居た誰もがそう思った。






「おかえり、キング」

と声をかけた俺に、


「ああ。瑠樹を奥で寝かせてくる」

と通りすがりにそう言ったキング。


俺は慌てて奥へと通じるドアへと駆け寄った。



「はい、どうぞ。瑠樹ちゃんの頭に気を付けて」

瑠樹ちゃんを両手で抱いてるキングの為にドアを開けてそう言えば、


「ああ、わりぃな」

キングはそう言うと瑠樹ちゃんの体をどこにも当てないように大切そうに運びながら部屋へと入っていった。



俺はそんな背中を見つめながらドアを静かに閉めた。




「何があっても、南の狼王なんかに渡せねぇな」

そう呟いた俺の言葉に、その場に居た全員が頷いた。


キングを人間らしく変えてくれる彼女を手放しちゃダメだ。


何があってこんな風になったのかは分からないけど。

このチャンスを逃せない。


姫さんがこちらの手の中に舞い込んで来たのは間違いない。


だからね?

俺達がしっかりと君を隠してあげる。


狼王が血相変えて探そうと瑠樹ちゃんを見つけさせない。





「よし、皆、撹乱作戦だ。上手く偽の情報を流しておいてくれ。ここに南の奴等が辿り着かない様にね」


「「「「「おぉ~!」」」」」

同じ意思を持ち拳を上げたメンバーは散り散りに街へと消えていく。



これで幾らかは時間稼ぎが出来ると思う。

南相手にいつまでも隠しておけない事ぐらい俺だってキングだって分かってる。


だけど、キングの為には今は時間を少しでも稼ぐ必要が有るんだ。


誰も居なくなった室内、俺はキング達が居る部屋のドアを見つめた。


瑠樹ちゃんに何があったのか知らないけど、彼女のお兄さんの咲留さんがキングに彼女の保護を頼んだのなら狼王になんて渡さない。



ね、キング、そうでしょ?






圭吾side.end
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