あの日あの時...あの場所で







『ああ、頼む。なにか分かったら連絡してくれ』

お、自棄に素直じゃん。

それだけ瑠樹ちゃんが大切なんだって伝わってくるよ。


「任せて。キングも何かあれば連絡してくれ」

『ああ』

キングの返事を聞いてから俺は電話を切る。



「皆、この間キングを訪ねてきた狼姫が行方不明だ。キングにとって大切な人だ。捜索を手伝ってくれ」

俺は周囲で見守っていた連中に声をかけた。


「瑠樹ちゃんが行方不明なのかよ」

礼二が顔を強ばらせる。


「ああ、そうらしい。瑠樹ちゃんのお兄さんの咲留さんから連絡が来たみたいだ」

「急いで探さなきゃ。おい、何チームかで手分けするぞ」

俺の言葉を聞いて唯が声を上げた。



直ぐに編成が組まれて、溜まり場に居た連絡が捜索に散った。


俺は情報の整理をするために溜まり場に残ってパソコンを開いた。


どこだか分かんないなら、ローラー作戦をするしかない。

ただし、南のテリトリーでは俺達も大きくは動けない。


だから、慎重に行動するしかないからな。




カタカタカタとキーボードを打ちながら、瑠樹ちゃんが誰かに拉致されたりしてないかを確認する。


西と敵対してる連中から調べていくも、拉致や監禁なんかは出てこない。



「瑠樹ちゃん...どこいったの?」

君にもしもの事があったら、うちのキングはダメになる。

本当にそう思うんだ。


だから、君を失う事は許されないんだよ。

お願いだ出てきてくれ。


















瑠樹ちゃんの情報は何一つ掴めないまま時間だけが過ぎていく。

誰からも朗報が入らなくて、俺は半ば苛立ってた。



そんな時に着信を告げたのはキングからの電話。


イヤホンにしていたので、ボタンを操作して慌てて出た。


「はい」

勢いよく出た俺の耳に聞こえてきたのは、


『瑠樹を見つけた。連れてそっちに向かう。南には一切漏れないように操作しろ』

安堵したキングの声に、俺もホッとした。


彼女を見つけたのはやっぱりキングなんだな。

さすがと言うか...本当、二人の絆が成せる技なのかも知れないね。



「了解」

俺は返事しながらパソコンを操作する。


『瑠樹は少し具合が悪い。飲み物や喉を通り易い食いもんとか用意しといてくれ。後薬と冷えピタも』

キングの口から冷えピタって出たことに笑いそうになったが一先ず堪えて返事を返して電話を切った。






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