あの日あの時...あの場所で








「ただいま」

聞こえてきたドアの開く音と咲留の声に慌てて頬に伝う涙を手の甲で拭った。



「じゃまするでぇ」

源次の声にカウンター越しにリビングのドアを見た。


咲留を筆頭にゾロゾロと入ってくるメンバー。


「瑠樹、生きてるか?」

ちぃ君、入ってすぐにそれってなに?


「あ、良い匂いする」

健が鼻をクンクンさせてる。


今日は皆が来るって聞いてたから、料理は多目に作ってる。


何でも、4人も久々に集まるらしい。

お互いに大学が忙しいらしくて。




「もうすぐ出来るから、席についといて」

カウンター越しに声をかける。


「あっ!洗濯物ある。瑠樹の下着とかあるかな?」

健の嬉しそうな声にはっ!とする。

忘れてた起きっぱなしだ。



「てめぇ、覗くんじゃねぇ。ったく隙もねぇな」

咲留の低い声が響く。


健から洗濯物の入った籠を奪った咲留は、自分の使ってる部屋へとそれを運んでいく。



「アホやな、健。黙ってみたら良かったんやで」

良くねぇわ! 

ニシシと笑う源次に、熱々の厚揚げを放り投げてやろうかと思った。




「瑠樹、ごめんな?変態多くて」


キッチンへと入ってきたちぃ君が謝ってくれる。


「良いよ。慣れたし。学校にも同じ様な奴居るしね」

大阪弁の彼を思い浮かべる。


「ククク...大翔だな?」

ちぃ君はよく分かってらっしゃる。


「うん。良く豪に蹴られてる」


「想像できる。明日、豪達と出掛けるんだろ?」


冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら聞いてくる。



「うん。女友達も一緒に行くんだよ」


「良かったな?」

人数分の缶ビールを側にあったワゴンに乗せると、私の頭を撫でてくれた。


「うん、女の子と買い物とか初めてだから楽しみで仕方ない」


「そうか、楽しんでおいで。でも、あの複合スーパーは西との境にあるから、豪から絶対に離れちゃダメだぞ?離れる時は女の子のお友達と絶対一緒にいること。良いね?」

私の頭に手を置いたまま顔を覗き込んでくる。


「...うん、皆一緒だから大丈夫だよ」

どうして、ちぃ君がそんなに心配するのか分からなかった。


私の表情からそれを読み取ったのか、ちぃ君は優しく微笑んだ。


「瑠樹は可愛いから誘拐されないか心配なんだよ」

と。


「もう、そんな年じゃないってば」

頬を膨らませて抗議した。

いつまでも子供扱いするんだから。




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