ヒミツの王子さま!


この入り口以外になにもない。

あるのは、大きな給水タンク。


ただ、それだけ。



あとは、抜けそうなくらい澄んだ青空と、心地よい風に乗って流れる白い雲。






・・・・問題がある。




その風に乗ってるのは雲だけじゃない。



「もうすぐミスコン始まっちゃうよ~」



そう言いながらフェンスに寄りかかるようにグランドを覗き込んでる日向。

俺は、日向とは反対側のフェンスへ向かう。


「はあ・・・」


溜息をつきながらフェンスの先を眺めると、シーズンを過ぎたからっぽのプールが見えた。
大きな50メートルプールの先は、山の木々がすぐそこまで迫っていた。
少し高い場所にあるこの学校の裏側は、もうなにもない。




「ナオ?」



さっきまでグランドへ視線を走らせていた日向は、今は俺を見つめてる。




「・・・・今、どうするか考えてるから。ちょっと黙ってて」



俺はそう言うと、こっちへ来ようとしていた日向を制止した。
俺の言葉に、一瞬体を固まらせた日向はなにか言いたげな顔をしたが、また背を向けてグランドに視線を落としたようだった。





はあ・・・俺って最悪かも。


『どうするか考える』なんて、うそ。


考えれるわけがない。


今の俺にはミスコンより問題あるんだよ!!


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