社宅アフェクション
お昼休みになった。最近は自然と集まってご飯を食べるようになった。当たり前のようになったその変化が嬉しい。


「あや子、かの子、昨日の動物番組見たか?」
「おっ、みたみた!ビション・フリーゼだっけか?あの顔の集まり具合ヤバかった!!」
「ふっ、だよな!!…って、会津には聞いてねーよ!」
「えぇ~?ガールズトークぅ?男の子を仲間外れにしないでぇ!」
「直人、気持ち悪ぃ言い方すんな」
「かっちゃんヒドっ!!助けて、しゅた~!!」
「はいはい」


直人はムードメーカーだ。いつも明るくて面白くて、空気をするりと変えてしまう。うらやましいなって思う。


「そういえばさ、メニュー係どうすんの?かっちゃん」
「あぁ、それだけど、京子…」
「いいよ、それに関しては。私が料理研ついでにやっとくから」
「じゃあ頼む。ほら、これ」


京子の申し出に、勝彦が素直にうなずき、一枚のルーズリーフを差し出した。


「なんだよ……あ、メニューと材料…」
「口頭でベラベラ言っただけだったから、まとめといた。なるべく短時間で大量に作れるものにしたから。試してみてくれ」
「おぅ、分かった。ありがとな」
「礼を言うのはこっちだろ。悪いな」


ビックリした。多分私だけじゃない、みんな。京子と勝彦がケンカもせずに会話している。しかも、お礼を言ってる。


よく見ると、酒田くんだけが、納得したような顔で勝彦を見ていた。


「かっちゃん、これ授業中に書いたの?集中しなきゃダメじゃん」
「バカ、10分休憩の間にだよ!バカ」
「あ、2回もバカ言った!」


何かが変わったような勝彦を、佳乃もいつもと違う目つきで見ていた。
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