社宅アフェクション
次の日の部活は、試合の前日ということもあって、練習終わりにはミーティングがあった。再度、選手の確認と試合相手の情報整理、そして監督からの一喝。
明日で、俺の野球人生が決まる。


「いよいよ明日だな」
「あぁ…」
「なんか緊張すんな」
「あぁ…」
「家に帰んぞ」
「いや…」
「人の話、ちゃんと聞いてたのか」
「いや…」
「どっちだよっ!!つか帰んぞ、今日は!!」


くだらない漫才じみた会話はいいとして、大陸たちのところへ行こうとする俺を、酒田は止めようとする。


「今日は心も体もしっかり休めろって!明日決勝だぞ?甲子園決まるんだぞ?」
「だったらなおさらだ!同好会なんて、理由になんねぇよ!!」


俺は野球でお礼をすると決めていた。だから、今は野球だけに集中しようと思っていた。しかしそれに反するように、心と体が俺をあいつらのもとに連れていく感覚がある。


図書同好会の部室には、いつものメンバーが集まっていた。一瞬驚くような顔をしたが、何も言わなかった。

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作業を終えた帰り。方向の違う佳乃が、俺の制服のすそをつかんだ。


「勝彦くん。あの…あ、明日──」


その時だった。
ドーンという大きな音が、空にこだました。


「なっ、なに!?私の話の途中で──」
「見ろよ!花火だ!!」


直人の指差す方向に、次々と花火があがる。


「どっかの町内の夏祭りか?」


しばらく見ていた俺たちだが、京子が口を開いた。


「つーか、かの子。先に言おうとすんなよ」
「だって、私だけここでお別れでしょ?」
「まぁいいじゃん、京ちゃん!花火も上がってさ、グッドタイミングっしょ!」


その言葉に続くように、みんなが俺に向き直した。


「な、なんだよ」
「勝彦!!(本荘、かっちゃん、勝彦くん、かつ兄、部長、勝彦先輩)」


「明日は最後まで見てるから」
「……おう」


あえて言わない激励の言葉。でも響く。
俺は雲1つない空を見上げた。
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