社宅アフェクション
「お待たせいたしました。決勝戦、藤掛高校 対 王嶋学園の試合、まもなく開始でございます。まず守ります藤掛高校の、ピッチャーは遠野君、キャッチャー───」


アナウンスが流れている。グラウンドには、私の学校、藤掛高校の選手が守備についていた。


「いよいよだな。ほらライト、本荘いる」
「うん…ねぇ、京子。王嶋学園ってさ、強いの?」


私の問いかけに、京子が驚いたような声で返した。


「あや子、知らないのか!?王嶋学園っつったら、甲子園の常連だろ!?スポーツ校だから強いんだ。トーナメント的に藤掛と当たらなかったから、こうやって決勝でかち合うようなもんだって……」
「その言い方だと、勝彦くんがまぐれで決勝きたみたいじゃない!」


佳乃がわりこんできた。


「…そうだな。言い方マズった。悪い。藤掛も強いよ」
「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む、って言うしね!」
「直人くん、まさか勝彦くんをネズミに例えてるのぉ?」
「あ、いや、別に……」


一方的な佳乃と直人の言い合いが始まったが、それは置いといて、王嶋学園が強いことはわかった。でも──


勝彦だって負けない。


「──ライト 本荘君。審判は、球審──」


勝彦の名前が会場に響いた。まくし立てていた佳乃も素早く反応し、歓声をあげた。


「一回の表、王嶋学園の攻撃は、1番 セカンド 堺君。セカンド 堺君」


始まった───
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