社宅アフェクション
我が校のピッチャー・遠野祐一くんは、文系でトップクラスの成績を誇っている。ちなみに勝彦は理系トップクラス。
頭もスポーツもできる2人は、学校内でも人気らしい……と、前に直人が言ってた。


「プレイ!!」


審判の声が聞こえた。両校の声援が重なる。


遠野くんが大きく足をあげ、投げた。
ボールはすごい速さで空を切り、キャッチャーのミットに収まった。


審判、選手、観客の声が入りまじる。
残りの2球も、正確にミットに吸い込まれていった。


1アウトをとった後、次の2打者も、塁に出すことなく完全に抑えこんで、相手の攻撃は終わった。


「よっしゃ!さすが遠野だな!」
「トノはこんなもんじゃないよ、京ちゃん!全員、3者凡退に抑えちゃうって!完全試合!」
「キャ~ッ!!勝彦く~んっ!!」


まだ勝彦は活躍してないけど……という言葉はあえて飲み込み、盛り上がる京子と直人を横目に、私はグラウンドを見渡した。


勝彦がベンチに向かって走っていく。
一瞬、目が合った気がした。
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