社宅アフェクション
俺は球を見ながら、全力で走った。
バックスタンドの壁が近づいてくる。それでも走った。


ホームランだけは避けたいんだ!この状況で投げたのが投手の意地なら、この状況で捕るのが右翼手の意地だ!!


歓声も仲間の声も、何も聞こえなかった。ただ球だけを見つめ、手を伸ばした。

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手と下半身に痛みがはしった。倒れそうになる体を必死で立て直し、2塁に向け送球した。審判の1人が俺のもとに走ってきていた。


「アウトっ!!!!」


その一言が会場に響き渡った。その瞬間、藤掛高校の応援スタンドから、歓声と吹奏楽のけたたましい演奏が流れでた。


セカンドが、俺の送った球をしっかり掴み、ベースを踏んでいた。


3塁にいたランナーはホームに戻ってしまい、1点はとられた。でも川崎からアウトをもぎ取った。


2アウト3塁。安心できるとは言えないが、まだ可能性はある。


審判に声をかけられた。


「君、どこかケガは……」
「大丈夫です」


グローブをはめ直そうと手を動かした俺は、痛みに顔をゆがめた。
ちくしょう……手首やっちまったのか…?


それに気づいた審判が合図を出し、試合は一旦中断された。
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