社宅アフェクション
九回の表、王嶋学園の攻撃が終わった。
言葉通り、打たせて捕る試合だった。
一度だけ内野の頭を越えるヒットがあったが、仲間を信じた遠野くんの投球と、それに応えたチームメイトの活躍で、失点は0だった。


「よっしゃ!!」
「勝彦く~んっっっ!!!!」


京子と佳乃が歓声(奇声?)をあげている。
次はいよいよ、こっちが攻撃する番。


「打つ順番、勝彦まで回ってくるかな……」
「回ってくる!あいつらは土壇場に強いから、ノーアウトでどんどん点いれて、4番まで回す!」
「あいつらって……直人、今まで試合みたことあんの?」
「………藤掛ファイト~っ!!!!」


直人はごまかすように声援に熱を入れた。
まったく……でもまぁ……


「信じるって言ったのは私だしね。頑張れ!!藤掛~っ!!!!」


直人が私を見てニカッと笑った。




「九回の裏、藤掛高校の攻撃は、9番 センター 城山君。センター 城山君」


この回で1点取れれば延長戦、2点目が入ればサヨナラ勝ちだ。
城山コールの中、敵投手・川崎正吾が構えて投げた。
誰にも打たせない。放たれたボールはまるで、そう言っているようだった。
< 219 / 331 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop