社宅アフェクション
部室には誰もいなくて、着替え終わって入った新体操練習部屋にも誰もいなかった。
どうやら一番乗りらしい。初めてだ。


一応副部長の私だけど、いつも足を引っ張るのは私。
学校祭のステージ発表でインハイ団体戦の演技を披露することになっている私たちは、そこまでに完璧に仕上げておかなきゃいけない。
なのに、私はいつまでも──


今、学校祭だって浮かれている場合じゃない。
そんな現状に、勝彦の姿を見て気づかされたのは事実だった。


「練習……しなくちゃ」


人一倍練習しなきゃいけない私が、京子たちとクラスの仕事をぐだぐだやって、部活後はすぐに大陸のところに行って…そんなことして自分で練習時間短くしてるなんて、頑張ってくれてる2人に失礼すぎる。


勝彦のこと、“いつも主語は自分だ”って言ってたけど、それは私のほうだ。自分のやりたいことだけやって、その代償を背負っている人に目も向けないで……今さらそのことに気づく。


申し訳なさを感じて当たり前。プレッシャーを感じて当たり前。今からだって、それに応える努力はできる。いや、しなきゃ!!


私はアップを始めた。

           :
           :
           :
           :
< 232 / 331 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop