社宅アフェクション
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「なぁ、もうおままごとやめてサッカーしようよ」
「いや。今、夜のごはん作ってるの!」
「まだ早いよ!お腹すくから、おままごと終わり!」
「え~っ!いやだぁ!」


佳乃ちゃんは泣きそうになるけど、僕だって男の子だから、おままごとホントは嫌いなんだ。
僕はどうしようって思って、おばさんとお茶を飲んでる母さんを見た。


「母さん……」
「勝彦、もう少しおままごとしてて?母さんね、今から本物のお夕飯買ってくるから」
「勝彦くん、あとちょっとだけ佳乃と遊んでくれない?」
「う~ん……わかった」
「ありがとね、勝彦」


母さんが嬉しい顔をしたから、僕も嬉しくなった。
佳乃ちゃんとの夫婦おままごとを続けた。


母さんは、おばさんと少し話したあと、買い物にでていった。
少したったら、雨が降ってきた。窓がバラバラ鳴ってる。


「あれ?さっきまで晴れてたのにね」
「僕、母さんに傘持ってく!」


いつも買い物する店は知ってる。きっと母さん、傘なくて困ってる。


「ん~、暗くなってきたからなぁ」
「大丈夫!いつも行くとこだから!」
「勝彦くん、どこ行くの?佳乃も行く!」
「僕一人で行くんだ!」


僕の母さんだから。一人じゃなきゃダメなんだ。


「分かった。気をつけてね、勝彦くん」
「うん‼行ってくる‼」


母さんに早く会いたい。嬉しい顔が見たいんだ。

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