臆病者の散歩道


5分後。

よりたぶんちょっと前。
10月なのを忘れていない俺は、寒さ対策にいつもよりガッツリ着て外に出た。
天体観測に必要なモノも鞄に詰めた。

その後、ちょっと遅れて柚は顔を出した。

絶対今の寒さを忘れてる。
そこもまた抜けてて嫌いじゃない。

「よし、行くぞ。」

久し振りの光景に思わず楽しくなる。

昔はいつも裏山へ二人で天体観測に出掛けてた。
今日ももちろん裏山。
裏山は明かりもなくて星を見るのには最適だった。

「彼女はいいの?」

柚は不思議そうに首を傾げた。
そういや結局柚には説明してなかった。

確かにちょっと前には居た。
可愛い子で、自分の柚に対する気持ちにも気付いてなかったし。
暇だったから付き合ってはいたんだけど。
かなりヤキモチも多くて、めんどくさくて…。

そもそも俺は今、柚がいい。

だから…。

「別れた。」

俺は歩きながらサラッと一言呟いた。


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