極上な恋のその先を。


「まったく、自分の立場と言うものをわかっていないようだね。 こんないい話を棒に振るなんて、気がしれん!」


その口調は、娘の幸せを望む父親の声じゃなくて……。
ただ、自分の思い通りに事が運ばなかった事に対しての、不満。


そんなふうに聞こえた。


あの子も、もしかしてあの会長に無理矢理縁談を持ちかけられた?


聞きたい……!
直接聞きたいっ!


くぅ!
ここで出て行ったら、お父さんの立場が……。


でも、でもでも!


唇をキュッと噛み締めると、すぐに背中に手が添えられた。
視線だけ上げると、美優が眉間にシワを寄せて首を振る。


「……」



大丈夫。

わかってる。

ちゃんと、わかってるから……。




「ふん。 あの小僧が今こうして仕事出来てるのも、私たちの会社があったてからこそだろう」



…………。



忌々しげにそう吐き捨てると、会長はスーツの胸ポケットからスマホを取り出した。

なにやら操作をして、それを耳に押し当てる。
会長はチラリとセンパイのお父さんに視線を投げると、クイッと唇を吊り上げた。



「その恩恵を忘れているとは、ヤツも呆れるほどバカだな。手はいくつもある。今更後悔しても、遅いからな。

まあ、泣いて詫びるなら考え直してやってもいいがね」



その言葉を聞いた瞬間、お父さんがただ黙ってその言葉を受け止めている背中を見た瞬間。



「ちょっと待ってくださいッ」



気が付いた時にはもう、あたしは彼らの前に飛び出していた。

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