MEMORY
ご飯を食べ終わると三人別々の部屋に泊まって居るワケだから荷物を取りに部屋に戻ってきた。
もう次の街に出発するそうだ。
今回、この街にも私の記憶のカケラは無かったらしい。
村の例の魔導師にもらった首飾りに着いた黒い石が光ると近くにあることを示しているということらしい。
1年旅していて一度も光ったことがない。
「本当は嘘なんじゃないのか」
そう首についている宝石を見下ろす。
”その石が光ったとき、あなたの記憶のカケラはすぐそばにあります。謳ってください、そうすればあなたの記憶のカケラはあなたの元へと戻ります”
今考えれば信じられない話。
なぜこの石が私の記憶のカケラの場所を知らせることができるのか。
「どうせ、私には何もできない…」
ただ、信じる事しかできないのだから。
「カトレア?もう荷物まとまりましたか?」
コンコン、とドアがノックされるとベッドの上の鞄にクローゼットにしまっていた服を無造作に詰め込みドアを開けた。
「終わった。もう行くの?」
「はい、次はフォルセイン王国のスクルド村。その次はグアラ村に行く予定です」
イヴは地図を取り出すと今いる位置とスクルド村、という場所を指さしてくれる
「結構、遠いね」
「ああ、それに…途中には人狼の住んでいる洞窟があるんだ。そこを通らなきゃ王国に行けない」
何時の間に来たのかアランも部屋に入ってくる
人狼、元は人間だけど狼の魂に憑依されて半分狼、半分人間。
憑りつかれた人間のほとんどの人格は狼に乗っ取られてしまうらしい。自我がない、ということ…。
「襲われる可能性があるんです。だからそこは人狼が活動しない昼間、丁度太陽が真上にある時間帯に行かなければいけないんです」
「でも、活動しているときもある…違う?イヴ」
そう言ってイヴに笑いかけると、苦笑いで返される。
「はい。カトレアの言うとうりなんです。だからアラン、よろしくお願いします。人狼に魔術は効かないらしいんです」
「おう、任せとけ」