Sweet Rain
「で? 一体どういうことなのか説明、してくれるよな?」

ドアの内側からシャワーの流れる音が聞こえていた。

見計らったかのように僕が弟に詰め寄る。一体、これはどういうことなのか、と。

弟は口ごもり、シャワーの音のほうへと一瞥をくれていた。

「ちょっとさ……まぁ、色々あって何から話せばいいのやら……」

「最初から話してもらって構わない」

「でも長い話になりそうだよ? もしかしたらそれだけで歴史物語くらいの長い話になるかも」

「大丈夫だ。ドンとこい」

「しかも話の焦点が定まらなくて聞いてるだけで気持ち悪くなるかも」

「高校では理系なんだろ? 論理的に組み立てて話してくれ」

「でもさぁ」

「いいかげんにしろよ! 事前に連絡もなしにいきなりやってきて、泊めてくれだと?しかも見知らぬ女の子まで一緒でその子も一緒にだっていうじゃないか!いくら兄弟だからって限度ってものがあるだろが!ここに泊めて欲しいっていうならこうなった経緯くらいは教えてもらってもいいだろ? それが筋ってもんだろ?!」

「……」

「わかったよ、兄貴。全部話すよ。……だけどさ、」

そこまで言って弟は再び彼女のほうへと一瞥をくれた。

「だけど、俺が兄貴に全部話したこと、それに話したっていう事実はあの子には言わないでいてほしいんだ」

「なにかまずいことでもあるのか?」

「それも聞かないでいてほしい」

「それもか」

「それもなんだ」

「……」

弟の真剣な目つきに圧倒された僕は、それ以上何も言うことができなかった。

ただ、「言ってはいけないんだな」と念を押すように確認すると、弟の首肯がした。

まるで、「助かるよ」と言っているかのようだった。

「ったく……相変わらずだな、お前は」

窓の外では降りしきる雨が激しさを増していた。 
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