Sweet Rain

雨のなかのドライブ

「とにかく」

朝食を食べ終えたあと、僕は弟に詰め寄るようにして話しはじめた。

「これからどうするつもりなんだ。しばらくはここにいてもいいが、いつまでもいさせられるわけでもない。ちゃんと考えはあるんだろうな?」

「あぁ」

弟の返事は心をどこかに置いてきたような話し方だった。

「おい!」

語調を強めるとようやく弟がはっきりとした口ぶりで返事をした。

「わかってるよ、っるさいなぁ……」

そこまで言ってようやく思い出した。

弟は根っからの低血圧だったということに。

殊に寝起きの弟は誰よりも機嫌が悪い。

まるでどこかのバスケット選手のように。

「昨日あれから考えたんだ。これからどうするべきかって」

「うん」

「兄貴さ、免許持ってたよね?」

「うん? 確かに持ってはいるが……車なんてないぞ」

「わかってるよ。免許があればそれでいいんだ。それと、兄貴今日は講義あるの?」

「一コマだけな。それがどうかしたのか?」

「兄貴には悪いけどさ、その授業、今日だけ休んでくれないか?」

「どうことだよ、それ」

「今日は車であるところまで行きたいんだ。車はレンタカーで借りればいいし、明日明後日は休日だろ?」

「なっ……お前、どこかに泊まるつもりだってのか?」

「一応ね、そのつもりだよ」

「何そんな簡単に言ってんだよ! あまりにも計画性がなさすぎだ!」

「でも、大丈夫だよ。問題ない」

「根拠がない」

「根拠はある。俺にまかしてくれ、兄貴」

「ちょっ……と……待てよ……いい加減にしろよ……」

僕はほとほと呆れかえってしまった。

今回のことといい、あまりにも弟の行動の突発さに動揺していたのだ。

「普段のお前からは考えられないような行動ばかりだな、今回は」

「人は変わるよ。変わるときは自分でも追いつけないようなスピードで変わっていく。普通だ」

「普通……か」

「そう、何も変じゃない。変化なんて、いつ訪れるか誰にもわからないよ、もちろん、兄貴だってね」

「……」

僕は返事をする気になれなかった。

これ以上弟の思いつきに振りまわれるのは勘弁だった。
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