Sweet Rain

ストロベリー・フィールズ・フォーエバー

県道のトンネルを抜けたところで弟がカーラジオに手を伸ばした。

スイッチを一つ一つ押しては放す。

おそらくは交通情報を聞くためだろう、何度かその動作を繰り返していた。

山間に位置するこの付近ではラジオがまともに聞ける保証もなかったが、ほどなくするとステレオからノイズ混じりの男性の声が聞こえてきた。

滑舌が良く、通った声は視界のほとんどを覆う雨とは正反対に気持ちのいいものだった。

「聞きづらいな」

僕が前を向いたまま訊くと、「ああ。全然だな」とラジオのスイッチから手を放した。

「雨だからかな」

弟がため息を吐き出しながら助手席のシートに深く身をあずけた。

遠くの方から雷鳴が轟いた。

雨足がいっそうに強まった気がする。

弟はワイパーの動きをじっと見ていた。

車に乗ってからは口数も減り、後ろにいる彼女とも一切話していない。

彼女もまた同様だった。

ずっと雨の降り続くつまらない風景を見ているだけだった。

フロントミラーで彼女の姿を確認すると、愁いを帯びた瞳が印象的だった。
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