幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「槐……きみは、本当は、戦いたくなんかないんじゃないか?」
横にいた山南先生が優しく語りかける。
「好きだった男を失って、自暴自棄になっているだけじゃないか?
修羅になることで、孤独から逃れようとしているんじゃないか?」
「黙れ……」
「今なら引き返せる。槐、私とともに来てくれ……」
「黙れって言ってるでしょおぉぉぉぉ!!」
槐の叫びは、まるで悲鳴みたいだった。
彼女は苦無を手に、風のような速さで、こちらに突っ込んでくる。
両腕を振り上げ、指の間にかまえていた何本もの苦無を、腕を振り下ろすと同時に投げつけた。
「させない!」
あたしも懐からもう一本の苦無をかまえ、飛んで来た苦無を撃ち払う。
防ぎきれなかった苦無が足や頬を傷つけ、少量の血が流れた。
「楓!」
総司の声が聞こえた。
けれどあたしはそちらを振り向くことなく、目前に迫った槐だけを見つめる。
振り下ろされる拳を避け、こちらも拳を繰り出す。
手甲で受け止められたそれを引っ込め、しゃがんで足払いをかけようとした。
しかし、槐の動きは早く、彼女は気づけばまた、天高くに舞い上がっていた。