幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「ええ、言いませんよ。
楓殿が意外に可愛らしくて、上様が少し照れてしまわれたことは」
「照れてなどおらん!」
「まあまあ、それで、効果のほどはいかがか?」
少しだけ冗談を言った松本さんは、上様に聞く。
一橋公も身を乗り出し、上様の様子をうかがった。
上様は、着物の袖をめくる。
すると、たしかに全体的に腫れてしまっているような腕が現れる。
「おお……!」
上様がみんなの見ている前でその腕を掲げると、指先から手首までの腫れが、ゆっくりとひいていった。
あたしの血が効いたのか……。
「すごいではないか!」
一橋公が興奮したような顔で言う。
「しかし、血が少量だったせいか、効果が表れたのは一部分のようですね」
松本さんが冷静に、上様が次々にめくる袖や袴の中をのぞきこむ。
「ああ、そのようだな……」
上様は感心したような顔で、腫れの引いた手を表から裏から見つめた。