幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「血が薬になるだあ?」


話を聞くと、永倉さんが目を丸くした。


「池田屋でそんなことが起きていたとはな」


「そりゃあ、上様が欲しがるはずだ。

国の行く末がかかっているこの時に、病に伏せるわけにはいかないからな」


斉藤と土方さんは、納得した表情でうなずいていた。


「まあ、ここに人狼がいるし、そういう体質のやつもいるんだろうけど……隠すなよ。

病になろうが、俺たちが故意に楓を傷つけるなんてこと、するわけないだろ」


原田さんがため息をついた。


たしかに、彼らを信用していなかったと思われても仕方がない。


謝ろうとすると、平助が震えた声で、うつむいたままぽつりと言った。


「池田屋で、楓は命をかけて総司を助けたんだね。

普通、できないよ。

狼に、自分を噛ませようとするなんて」


「……ああ……」


俺は楓に、いったい何度助けられただろう。


きっと心細くいるであろう彼女のことを思うと、胸が苦しくなった。


すると、平助が顔を上げ、怒鳴る。


「……それだけ惚れて、惚れられた相手なら、新撰組を抜けてでも、絶対に助けてやれよ!!」



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