幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「伊東の野郎……今度は隊士たちをごっそり奪って行こうって気か」
副長が鬼のような顔で舌打ちをする。
参謀が山南先生と槐を繋いだのも、きっと彼と土方副長を仲違いさせるため。
そして、その企みはまんまと現実になってしまった。
副長の表情から、山南先生を失った悲しみと、それを絶対に許さないという伊東参謀に対する怒りがにじみでていた。
その数日後……。
局長と副長、そして総司が集まって雑談していた部屋に、お茶を持ってきたついでに隅に座る。
すると、廊下から静かな足音が聞こえてきた。
全員が口を閉ざすと、ふすまの向こうから声がかけられる。
「近藤さん、ちょっと良いでしょうか?」
伊東参謀の声だ。部屋中に緊張が走る。
「どうぞ」
局長が言うと、すっと静かにふすまが開いた。
入ってきたのは、伊東参謀と新井さんの二人。
「あら、土方さんもいたのですね」
眉をひそめて参謀をにらむ副長。
その燃えるような視線を無視し、参謀は優雅な所作で座ると、まるで歌でも詠うかのような軽やかさで、予想した通りのことを口にした。
山崎監察が報告した、勤王と佐幕、思想の違いからの離隊を。