幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「今日くらいはいいじゃねえか。なあ、楓」
珍しく土方副長が、あたしにお茶の入った急須をさしだした。
大人しくそれを受けると、彼は真剣な顔で、ぼそりと言った。
「これからも、総司を頼むぜ。こいつに関しては、お前だけが頼りだからよ」
「副長……」
「これからは妻としても、支えてやってくれ」
「はい……!」
あたしはまっすぐ副長の目を見返して、返事をした。
これから……。
きっとこれからも、新撰組の厳しい戦いは続いていくだろう。
平坦な道が待っているとはとても思えない。
失った仲間もいるし、幕府の権力は衰退していく一方だし、総司の体のことだって心配で、不安もたくさんある。
けれど、絶望だけはないから。
あたしたちが生きて、前を向いている限り。
絶望だけは、どこにもないはずだから。