マラカスの男

客の大半が手や足でリズムを取りはじめて店は騒然として来る。


一緒に歌っている者もいた。


男はマラカスを両手で降りながら足を上げて躍りながら歌う。


顔が汗で光る。


随分長く聞いていたような気がしたが五分程度だっただろうか。


男は最後にうめき声のような咆哮をあげる。


曲が終わると客から拍手と口笛が、聞こえた。


中には興奮した客が空き缶や瓶を投げた。


俺もその場にジョニーウォーカーの瓶を叩きつけた。



男は曲が、終わると静かにサンキューと言い手を一度だけ高く上げたるとビーチサンダルを履きマラカスを持つとそのままステージの裏に消えた。


その後ろ姿は、何処にでもいる中年のものだった。


まさか、一曲で終わるとは思わず客からアンコールが、続いたが、男は二度と出て来なかった。


次のジャズバンドが、出て来たが客はすっかり興味を無くしたようでおしゃべりしたり日本人の女といちゃついたりし始めた。

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