聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
第六章 涙

―わかった。

ひらめきは突然、訪れた。

ぼんやりと漂っていた靄(もや)のような気配が凝縮し、ひとつの場所をライトに示していた。プリラヴィツェの辺境ピューア、そのあたりから紛れもなく〈光の人〉の気配がする。

仲間たちに知らせなければ、とライトはグランディオム王の間の玉座から立ち上がった。

ひれ伏し控えていた従者代わりの獣たちがあとについてこようとするのをライトは手振りひとつでしりぞけた。

物言わぬこの忠実な獣たちを、ライトはいまひとつ好きになれなかった。

四魔月将たちはグランディオム建国を宣言するや、王国としての体裁を保つために奔走した。

獣人族などの手先の器用な魔月を集め城や町を修復し、装飾布を刺繍させ、血を洗い清めさせた。

地下貯蔵庫には大量の人肉を保存し、血を絞って飲み水とした。

獣たちを位分けして軍や政治機構をつくり、自分たちがその先頭に立った。

ライトには身の回りの世話をする獣人たちや、護衛の獣たちがつけられ、一国の王として何不自由のない暮らしが始まった。

だが、どれだけ体裁が整っても、喋ることのない獣たちの王国はどこかうすら寒いとライトは感じるのだった。

自然、言葉をかわせる唯一の存在である四魔月将たちを重用していた。

ライトは四魔月将たちを求め、長い廊下を歩いた。城は黒光りする鋼鉄でできており、どこもかしこも重々しい。壁に飾られた絵の中の花々の、優しい色合いだけが浮いて見える。

「―確かになぁ」

耳に馴染んだ声が聞こえてライトは振り返った。

今のはゴーグの声、ヴァイオレットにあてがった部屋の中からだ。
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