忠犬ハツ恋
女心と夏祭り
檜山君も私も人混みは苦手と言うところで一致したから、檜山君のバイクで荒木先生の教えてくれたお寺に向かった。

でも辿り着いてみて少し後悔した。

小高い丘の上の鄙びたお寺。
周りは鬱蒼とした木々と墓石に囲まれ、
街灯らしい街灯は一つもない。

花火を見る前にこの世のもので無いものを見そうで、ここまで人気が無いと恐ろしくて花火を楽しめないような気がした。

「檜山君、やっぱりココ止めない?」

「お前、ここまで来てそう言う事言う?」

「だって………。」

「怖いか?」

私が小さく頷くと檜山君は静かに私の手を握った。

「少し我慢しろ、もうすぐだ。」

檜山君はお寺の傍の細い石段を登り出した。

石段を登り切ったところは少し開けていて、石造りのベンチが1つ置いてあるだけだった。
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