忠犬ハツ恋
荒木情報屋さん
夏休みになって学校での補講の後はシャロンに入り浸るようになっていた。

今日のシャロンはどこかの会社の送別会とやらで貸し切りだった為、檜山君と荒木先生と私とで201号室で夕飯兼勉強会。

私は今やすっかり荒木先生と打ち解けていた。

「ハチ公ちゃんテストってのはさ、入試もそうだけど出題者の好みやらクセが出るもんなんだ。
塾はその辺を徹底的に分析して生徒を指導して行く。
むやみに勉強するのも別に悪くはないけど、出題者の意図を探るのも手だよ。」

「出題者の意図…ですか?」

「もし自分が試験を作る立場ならどの辺を出すかな?って考えてみる。
生徒にどの辺を理解しておいて欲しいと思うか?とか。」

荒木先生の言う事は分かるけど、そんなに簡単に出題者の意図が分かるとは思えなかった。
それでもしヤマを外したら大変な事になる。

檜山君は私達にお構い無しに相変わらず教科書を読み耽っていた。

荒木先生は側に置いていたコーヒーを飲むと大袈裟に溜息をつく。

「ねえ、ハチ公ちゃん……女の人って怖いねぇ……。」

イキナリ荒木先生がそんな事を言うから私は持っていたシャープペンシルを一旦置いた。

「荒木先生に何があったのか知りませんけど、女の私にそういう事を言うって喧嘩売ってますよね?」

檜山君が私達の遣り取りに笑う。
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