忠犬ハツ恋
東野を出て少し考えた。
今は誰とも会いたくない。
シャロンに向かい掛けた足を反転させた。

「おっせーよ!」

何故か振り返った目の前に檜山君がいる。

「……もしかして…ずっと待ってたの…?」

「1時間くらいか?たいした時間じゃない。
お前が泣かされて出て来るのを今か今かと待ってた。」

「泣いてないよ!!」

檜山君は私の頭を抱えるように抱き締める。

「俺に嘘をつくな、バーカ。
こんな事になるから一色のとこになんか行くなって言ったのに。」

檜山君がそんな事を言うから、
私の中で必死に我慢していた涙が一斉に溢れ出した。

「泣き止むまで俺ん家行くぞ。
兄貴が上等の肉を仕入れてお前を待ってる。
"体験講座お疲れメシ"だと。
上手いステーキ食って元気出せ!」

「……ごめん。」
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