忠犬ハツ恋
未体験ゾーンとフランス映画
バイクはあっという間にシャロンに着いた。

「檜山君ってスピード狂?」

「おかげでモヤってんの、少しの間忘れたろ?」

「え…。」

檜山君は振り返る事なく201号室に向かってズンズン進んで行く。

「何があったかは聞かない。
俺にとっては白石が自分の意思で今ここにいる、それが重要なんだ。」

「檜山君……。」



201号室に入って私は檜山君の袖口をそっと掴む。

「何?腹減ったんならすぐ兄貴に賄い頼むけど?」

「………今日、泊めて?」

檜山君は一瞬困ったような表情を見せた。

「別にいいけど、それ、自分の身の危険分かって言ってんの?」

私は静かに頷いた。

「……とりあえず飯、食おうぜ。」

檜山君はシャロンにいるお兄さんに電話をかけると賄いを2人前頼んだ。
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