忠犬ハツ恋
大我は月見うどんを手に俺の近くまで来て言った。

「美咲ちゃんの親友だが、この間妊娠して彼に中絶費用を渡されて破局して流産したんだと。
そんな親友のところに世話になると思うか?」

「………そんな話は聞いてない。」

「言えるかよ。
美咲ちゃんは親友を傷付けた彼を憎んでる。
今そいつとお前がダブるんだと。
そんなお前との喧嘩話持って親友の家に行くとは俺は思わないね。」

「………だからって檜山のところに行くとも…。」

「忘れたのか?
あいつはシュシュを俺に渡しながら"それは返す"と言ったんだ。
ヤツが本気ならこんなチャンス逃すもんか。」

大我の言う事が妙に説得力があって俺は押し黙るしかなかった。

「東野の向かいにあるカフェ、行ったことあるか?
そこは檜山の兄がやってる店らしい。
檜山はそのカフェの上のマンションに住んでる。
部屋番号は荒木先生に聞け。
荒木先生は檜山の小・中の家庭教師だったそうだ。
何らかの理由を付ければ教えてくれるだろ。」

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