忠犬ハツ恋
教室に着く頃には汗ダクでカバンからミニタオルを出して噴き出す汗を拭う。

「どしたの?美咲?
遅刻ギリギリって顔してるけどまだ時間あるよ。」

茜ちゃんに言われて時計を見ると走り続けたせいか予想よりも随分早く教室に着いていた。

「茜ちゃん、檜山君は?」

「もうすぐ来るんじゃない?」

私は席につきとりあえず教科書を片付けた。
ノートで風を送ってもしばらく汗は止まりそうに無い。
胸元を少し開けてタオルで胸元の汗を拭うと茜ちゃんがニヤニヤして私を見ていた。

「…な、……何?」

「美咲もやるときゃやるねぇ〜。
何よそのキスマーク。」

「えっ?」

私は慌てて開けていたブラウスを手繰り寄せた。
その時背後から冷めた声が降って来る。

「へぇ〜〜、白石の胸にキスマーク?
誰から付けられたんだろうなぁ?」

檜山君は背後で一言そう言うとそのまま踵を返して教室を出て行こうとする。
私は慌ててその後を追った。

「待って!檜山君。
何処に行くの?」

檜山君は私の呼び掛けに止まる気配など無くスタスタと校舎裏へと向かう。
あちらは歩き、こちらは走っているのに距離が縮まらないのが酷くもどかしかった。

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