忠犬ハツ恋
「ハチ公ちゃん、圭太は本当に失恋したの?」

光太郎お兄さんが優しく私に問い掛ける。
私は静かに首を横に振った。

「ようやく自分の気持ちに気付いたんです……。
檜山君に……会いたい。」

零れ落ちる涙は拭っても拭っても後から後から溢れて来る。

「圭太は阿呆だなぁ…。もう少し待ってあげれば良かったのに。本当に困った弟だ。」

シャロンの厨房の空気はどんよりと沈んでいた。
その空気をサクラさんが打破する。

「ハチ公ちゃんここで働けば?」

「えっ?」

「圭太が何かしら連絡して来るのはココなんだから、ここにいれば何かと圭太と繋がる可能性が高いでしょ?」

「……でも…ウチ、バイト禁止……。」

そこで光太郎お兄さんもサクラさんに同調する。

「それなら報酬は賄いメシと荒木先生の特別授業ってのはどう?
圭太の穴を埋めなきゃならないし半年後にはサクラもお産で抜ける。ハチ公ちゃんが手伝ってくれればシャロンは大助かりなんだけど……。」

「俺の特別授業って何勝手に決めてるんですか…?」

荒木先生が呆れ顔で突っ込むのをサクラさんが言い返す。

「どうせ圭太がいなくてもタダメシ食べに来るんでしょ?それくらいしなさいよ!」
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