忠犬ハツ恋
"奥の部屋"と案内されたのはVIPルームとか言うのでは無くドラムやギター、アンプなどが乱雑に置かれたスタジオだった。

一色先生は隅のソファーを指し示し私に座るよう促した。

「ここなら誰かに見つかる心配は無い。
美咲ちゃん何飲む?オレンジジュース?烏龍茶?」

私は慣れない空間に落ち着かず、ソファーに数回座り直して烏龍茶をお願いした。

一色先生がこの部屋の扉を開けると先ほどカウンターにいたもう1人のピアスの男性が待ち構えていた。

一色先生は彼に飲み物をオーダーして私の隣に少し隙間を空けて座った。

「大我お兄ちゃん……ここってそう言うお店なんですか?」

「そう言うお店って?」

つい出てしまった素直な疑問を慌てて掻き消した。

「すみません!何でもないです!!」

「あぁ、俺みたいなのが集まる店かって?
いや、そうじゃ無い。さっきオーダー取りに来てたナギ君はノーマルのはずだよ。
ユキさんは……どっちもイケるんじゃなかったかな?」

「………どっちも…?」

私はなかなか馴染みのない世界に混乱していた。
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