漆黒の花嫁 - リラの恋人 -


腕組みをしたまま。
彼は、あたしが男たちに連れて行かれるのを見つめている。

さっきの笑顔はどこにもなかった。


なんで?
何、コレ。


――もしかしてあたし‥、
売られた‥??

騙されたの‥?


あたしを乱暴に引っ張る腕が痛い。
その勢いのまま、汚らしい馬車の荷台に投げ込まれた。


「‥痛ッ!
‥‥‥最‥悪‥」


荷台の奥に、あたしみたいに小さくなって震える幼い少女がいた。

あたしが来たのに気付かないくらい怯えている。


なにこれ、なんでこんなリアルなの?

夢じゃ、
ないの??


「―、――!」


あたしを投げ入れた男が、何事かを叫んでいる。

荷台が激しく揺れながら動き出した。





‥こわい。

‥‥こわいよ。


誰か‥、

父さん、
母さん。


――助けて、苺‥!!




涙が零れた。


不安で、
こわくて、

‥ショックで。





だから、

だから決めてたのに。



もう男なんて、


信じないって。

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